Anicca・Dukkha・Anattaは仏教の教えで、アニッチャ・ドゥッカ・アナッタンと読みそれぞれ無常・苦・無我を指します。仏教ではお釈迦様が悟った真理のことをダルマといい法と訳されます。その教えの中に存在するのが、全ての物事が無常で苦、無我であるという三相です。詳しく見ていくとドゥッカは一切皆苦ということであり、人生は思い通りにはならないことを意味しています。お釈迦様は死んでいくことや病気、老い、生きることそのものを四苦と表現しました。また心身をコントロールできないことや愛するものといつかは離れなければならないこと、憎い相手と会うこと、お金や地位など望む物が手に入らないことを八苦といいます。

仏教は専門的な分野で難しいと考える人も多いですが、これらの辛さは誰もが一度は経験したことがあるものです。なぜこの世界はこのように憂いを帯びるものなのかを、解き明かすのがアニッチャやアナッタンだといえます。アニッチャは諸行無常ということです。全ての物事は絶えず変化しており、変わらない物は何もないのに人はそれを望んでいます。例えばお金や地位、名誉といったものに対しその感情を向け、執着してしまいます。変わりゆく物にこのままであって欲しいと願い執着するのは辛いことであり、全ての物は移ろいゆくと理解するだけで人生は楽になります。アナッタンは諸法無我という意味で、全ては繋がりの中に存在することを理解しなければなりません。財産や命などは独立したもののように見えますが、実際はそうではなく様々な繋がりの中で成立しています。
食物連鎖で成り立つ自然環境のように、人間を取り巻く全てのものは自分1人の功績ではなく絶妙なバランスの上で存在します。他者との関係を絶てばバランスは崩れて、存在できなくなります。自分中心な生き方になりがちですが、生かされているのだと認識することが大切です。仏教には因果応報という言葉があり、現代ではしっぺ返しといった悪い意味で使われることが多くなりました。しかし本来はあらゆるものには原因と結果があり、良いことも悪いことも自らの行いによるものだという教えです。アニッチャとアナッタンを十分に理解することで、目の前の1つ1つに一喜一憂することなく心を落ち着けることができます。これが涅槃寂静という仏教における悟りであり、お釈迦様が仏教のスタートとして示したドゥッカの中で幸せに生きるヒントとなります。